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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』『ゲット・ラッキー キルDr.ラッキー・カードゲーム』(2015年03月)
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『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』
『ゲット・ラッキー キルDr.ラッキー・カードゲーム』
インタビュー

 春。出会いの季節。
 気の合う仲間が見つかったら、ゲームに誘ってみませんか。
 グループSNEがボード/カードゲームの製造を始めて1年半が経ちました。その間、『ゴーストハンター13タイルゲーム』といったオリジナル作品、『ポイズン』『ブラックストーリーズ』といった海外作品の日本語版を世に送り出し、少しずつですがゲーム会の定番、あるいは家族団らんのお供に加えさせていただいてきたように思います。
 そしてこのたび、新たに2つの自信作をお届けできることになりました。
 ワイワイ楽しめるファミリーゲームの
『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』、コミカルでちょっとブラックなカードゲームの『ゲット・ラッキー』です。
 この2作について誕生秘話などを、デザイナーである
安田均と翻訳家である笠井道子に聞くことができました。さらには、この春から夏にかけてのラインナップについても初・公・開!
 ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』
デザイン:安田均/グループSNE
イラスト:弘司、合鴨ひろゆき
発売元:cosaic

『ゲット・ラッキー』
デザイン:ジェームズ・アーネスト
イラスト:合鴨ひろゆき、チーパス・ゲームズ
発売元:cosaic
2015年03月
記事作成 柘植めぐみ




1.いよいよベールを脱ぐ『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』!

―― 本日はグループSNE/cosaicが新たにお送りするボード/カードゲーム2点について、ボスこと安田均笠井道子にお話をうかがいます。
安田 よろしく!
笠井 よろしくお願いします。
―― さて、待望のオリジナル作品『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』がいよいよ発売されるということですが……。
安田 ようやくすべての作業が終わったところ。かんぱ~い!
笠井 かんぱ~い!(エアグラスをぶつける)
―― 『ゴーストハンター13タイルゲーム』につづいて、「ゲームデザイン:安田均」再びですね。
安田 最近、ボードゲームを作るのが楽しくて(笑)。3~4か月に1つ作らないと気がすまない……というのは冗談だけど。いやはや、大変だった。
―― お疲れさまでした。ではまず、『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』(以降、『コクーン』)ってどんなゲーム? とお思いのみなさんに説明を。

 プレイヤーはダイスを振り、ぐるりと円形になったコースを進んでいく、言わば「レースゲーム」。手番が来たら特製の「ダイスタワー」に6面体ダイス3個を放りこむ。このうち1個は「ターゲットダイス」と呼ばれるもので、さまざまな副次効果をもたらす。あとの2個(プレイヤーダイス)の合計分のマスを進んだら、止まったマスの指示に従う。が、ゲーム序盤のマスは空白。ここに手持ちの「タイル」を置くことで、しだいに盤面ができあがっていくのだ。
 そう、「すごろくを作るすごろく」。でもすごろくのようにゴールすること自体が目的ではない。ここは「コクーン・ワールド」と呼ばれるファンタジー世界で、プレイヤーはあちこち旅する冒険者。なので目的は、「経験点」を稼ぐこと。
 でもこれが一筋縄ではいかない。世界の2つの陣営のどちらに味方するかによって、あるいはダイスやタイルによって、思わぬところで思わぬことが起こるのだ。正直……わけわかんない!
 ちなみに「コクーン・ワールド」とは、原案:安田均/著:友野詳による小説シリーズ。この冬、たてつづけに復刊されたのだけれど……。

安田 じつは「コクーン・ワールド」の原作ゲームを作ろうと思ったわけじゃないんだ。
―― えっ、そうなんですか?
安田 とにかく面白いゲームを作りたかった。いや、面白いって言ってもいろいろあるよね。ひとことで言うと、「カオス(混沌)なゲーム」を作りたいと思ったんだ。ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』で言う「眩暈(めまい)のするような」やつ。ほら、最近のドイツゲームって、計算高いゲームが多いだろう?
―― まったくですね。
安田 あれの逆。ドイツゲームって、昔はもっといろいろあったんだ。そのなかに、「ウソ、なんで? こんなに変なのにどうしてこんなに面白いの?」というゲームもいっぱいあった。
笠井 たとえばどんなゲームですか?
安田 『テイク・イット・イージー』とか『6ニムト』とか。『イースター島』もそう(註:モアイ像のなかに石を入れて動かす変ちくりんなゲーム)。いま、石を使った日本の『枯山水』というゲームが話題になってるけど、ドイツでは昔から石を使うものがいろいろあったんだよ。設定はばかばかしいけれど、システムとしてゲームになっている、でもこの破天荒な展開はなに? どこかに論理性はあるんだけど、いっぽうで突拍子もない。そういう古きよきドイツゲームが減っているんじゃないかと思い、ぼくもそうした感覚のものを作ってみたいと考えたんだ。
―― 面白い発想ですね。
安田 そこへ「コクーン・ワールド」と「ルナル・サーガ」の小説復刊の話があって。つぎにゲームを作るなら、あのコクーン・ワールドの破天荒さとぼくの思っているゲームをマッチングさせたら面白いものができるんじゃないか、と思ったんだ。
―― なるほど。
安田 だから小説をそのままゲーム化するんじゃなくて、面白いゲームをコクーンに当てはめたいけどいいかな? と友野くんに訊いたら、「もちろんです」と答えてもらえて。当然、ルールブックの世界設定は彼に書いてもらったし、テストプレイにもたくさん入ってもらった。
―― それで、目指したゲームになりましたか?
安田 うん。遊んでいただくとわかってもらえると思う。
―― 確かにわたしも、毎回ぎゃあぎゃあ大騒ぎしながら遊んでいます。
安田 遊ぶたびに展開が変わるでしょ?
―― 変わりますね。まったく計算が立ちません。
笠井 わたしは「ミスがありえない」ゲームなので好きです。社長がおっしゃったような真面目なゲームだと、あとで「あのときこうしておいたら勝てたのに」と後悔することが多いんですが、『コクーン』にはないんです。
―― かといって、全然考えないわけじゃないんですよね~。
安田 やってみたら、あ、こうなってるんだ、としだいに気づいてもらえる仕掛けになっていると思うよ。
―― そうですね。遊んで肌で感じていただければと思います。



2.システムに踏みこんで……

―― ゲームの基本は、終了時に「経験点の多いプレイヤーの勝利」ですよね。
安田 じゃあ、どんどん得点を積み重ねていけばいいじゃないか、と思うかもしれないけど、じつは経験点トラック円形になっていて、「10点」のつぎは「0点」ってところがミソ。
―― そう、だから点を取りすぎるとヤバい(笑)。
安田 「不運」の陣営につくと、経験点をもらう向きが逆になる(註:9、8、7……と経験点マーカーが降順に進む)ので、そっちがいいかと言うと、やっぱり得点しすぎて1点や0点になったり。
笠井 いかにちょうどいいあたりを行ったり来たりするかが難しいですよね。
安田 その「右往左往」を楽しんでもらえたら本望です。
―― そういう意味で、「コクーン・ワールド」らしいドタバタが再現されることになりましたよね。
安田 あとストーリー的なことを言うなら、「シナリオ」を5本載せて、いろんな遊び方ができるようにしました。順番に遊んでいくと、コクーン世界の歴史を体験できます。
―― レースゲームなのにシナリオ? と最初は思いましたが。
安田 シナリオ1は入門用、シナリオ2はそのままつづけて遊べるちょっと変わったシナリオ。このゲーム本来の楽しみを味わうなら、ぜひ3と4を遊んでください。5は言うなれば究極のシナリオかな(笑)。
―― 1つのゲームと思いきや、それだけ遊び方の幅があるんですね。
安田 3には「闘技場」があって、これがぼくとしては会心の出来。堪能してください。
―― そのシステムの部分をもう少し聞かせてください。すごろくのようなゲームということですが……。
安田 たとえば『人生ゲーム』とかがすごろくゲームの基本だろうけど、あれは「スタート」があって「ゴール」がある。でも『コクーン』は、その「ゴール」がまた「スタート」になっている周回ゲーム
笠井 頭と後ろがくっついてる……ウロボロスですね。
安田 そう。あえて言うなら、『モノポリー』がそうだった。
―― おっ、だんだんゲームの歴史の話になってきましたね(註:安田は大学でコンピュータゲーム史を教えています)。
安田 すごろくは昔からあったけれど、周回にした『モノポリー』は画期的だった。でも、得点のほうもグルグル回るようにしたものはあまりなかったんじゃないかな。
―― 確かに。とにかく得点計算が変わっていますが、タイルを置いてすごろくを作っていくというのも面白いですよね。
安田 かつて『モノポリー』を真似したゲームが山ほど出たんだけど、そのなかに変わったレースゲームの『ボンカース』というのがあった。自分で「進む/戻る」のチットを置いていくという点では参考にさせてもらったよ。でも『コクーン』では、最初からボード上にいくつかタイルがあって、それらをめくりつつ同時に置いていく、というのをやってみた。
―― 『ボンカース』は展開が似た感じになることが多いです。
安田 あとストーリーゲームということで、できごと(イベント)も3つ用意した。1つは、さっき言った経験点トラックの周回を右向きにしたり左向きにしたりするもの。幸運の神と不運の神のどちらにつくかという意味で、「イニシエーション」という名前のマスにした。
笠井 イニシエーション……入信、という意味ですね。
安田 コマがひっくり返り、得点する向きが変わる。ふつうすごろくって「どんどん前に進みたい」と思うものだけど、これは「止まりたくても止まれない」すごろくにできたと思う。じつは昔翻訳したプリーストの『逆転世界』のイメージがある。止まろうとしても止まれない……。
―― まったくです(しみじみ)。
安田 つぎに「誰がつぎの最初にスタートに行くのか」を予想する「ゴッズベット」というマス。昔からレースゲームのなかには、クニツィーアの『ロイヤルターフ』や昨年のドイツゲーム大賞受賞作の『キャメルアップ』のように、「賭けるのが面白い」ゲームがあった。それを導入して、賭けて当てることで一気に経験点を稼げるようにしたんだ。
―― 経験点がほしくないときもあるので、逆に「いかに予想を外すか」も面白いゲームになっていると思います。
安田 もう1つはやはりファンタジーらしく、「ダンジョン」。ここではダイス4個を振って、ポーカーのような役に当てはめてモンスターを倒すことになる。
―― ついつい熱くなりますよね。
安田 この3つの要素で味付けをしている。じつはどれにも「取りたい」「取りたくない」がある相対性に彩られた豪華なすごろくになったと思う。
―― ぜひご家族で楽しんでほしいですよね。
安田 4~5人でわいわい楽しめるけど、なんと2人からでも遊べるよ。
―― しかもプレイ感覚があまり変わらないんですよね。不思議。
安田 不思議と言えば、遊ぶたびにコアになる場所が変わるよね。このシナリオだとボードのこのへんにタイルが集中するけど、あのシナリオだとこっち、というふうに。
―― はい、不思議です。すべてはダイスがなせる業だと思うのですが……ダイスと言えば、内容物に豪華ダイスタワーが!
安田 ふふふ、グループSNEのゲームはコンポーネントもひと味違うのだよ(笑)。



3.デザインにも凝りました

安田 今回は幸運/不運の神さまが運命を司る象徴として、ダイスタワーをボードの中央に置くことにした。そもそもコクーン世界は地下にあって、巨大な柱が天井を支えているので、その柱の1つをイメージしている。
―― ダイスタワーを入れた日本のゲームは初めてじゃないですか。
安田 ダイスタワーみたいなダイスを振るためだけの装置なんて、どうしてあるの? と思うけど、ドイツにはけっこうあるんだ。
―― 途中でキューブが引っかかるようにしたゲームの『将軍』『アメリゴ』なんてのもありますからね。
安田 柘植さんが大好きなゲームばかりだね。
―― (笑)。ダイスタワーは合鴨ひろゆきさんにデザインしていただいて、ほんと、地下の柱のような感じになりました。
安田 世界の中心なら湖があるだろう、と裏側は青くしていただいたり。
―― ボードの真ん中に置くとちょぴっとだけ邪魔なのですが、どうしてもここに置きたくなりますよね。
安田 世界の象徴だもの。でもこのダイスタワー、もちろん普通にダイスを振ることができるので、ぜひ『ソード・ワールド2.0』でも使ってください(笑)。
―― 箱絵のほうは、弘司先生の小説のものを使わせていただきました。
安田 1~3巻の表紙をコラージュしました。メインの登場人物――タリアやイシュカたちを、ゲームでも使うことができますよ。合計11人のキャラクターのシールが入っているので、お好きなキャラクターのものをコマに貼りつけて遊んでください。
―― 新規のキャラクターもいますよね。合鴨さんに描き下ろしていただいて。
安田 内容物としては、あとはタイルかな。普通すごろくって、「どこそこへ進め」みたいな指示がボードに書いてあるものだけど、これは手札にタイルを持って、どこにどれを置くか、自分で考えてボードを作っていくことになるからね。
―― これはあとにとっておこう、というちょっとした戦術もありますよね。
安田 勝つことが難しいゲームだと言ったけど、そのなかでもタイルの配置を考えて、いかにループを作ったり、いかに他人に悪さをしたり、ということを楽しんでほしい。
―― タイルが増える後半には、連鎖が起こりまくりますよね。
安田 とくにシナリオ4ではあっちこっちへ行きまくって、1手番で10点入ることだってある。じゃあ、10点取って嬉しいかと言われれば、トラックを1周して0点に戻ったり(笑)。
―― でもなぜか、経験点はとにかくほしくなるんです。
安田 シナリオ3の「闘技場」はダイスを振ってモンスターを倒すことで得点するんだけど、もう点は要らない、というときでもなぜか行きたくなってしまうよね。
―― ちなみに「ダンジョン」のモンスターはコクーン世界のもの、「闘技場」のモンスターはフォーセリアから連れてこられているという設定で「ソード・ワールド(旧)」のものになっています。どちらも友野さんに選んでいただきました。
安田 フォーセリアだから、「闘技場」に行ったときのプレイヤーのHP「4(フォー)点」
―― ダジャレか!(笑)
安田 もちろん、原作は知らなくてもじゅうぶん楽しめるよ。ほら、ドイツゲーム賞を受賞した『大聖堂』だって、ケン・フォレットの原作はほとんど出てこないけど、ゲームとしてはめちゃくちゃ面白い。
―― あれは人物がカードで少し出てくるくらいですもんね。
安田 まずゲームとして面白いものを目指しました。ぜひ楽しんでください。
笠井 最後にちょっといいですか?
―― なになに?
笠井 わたし、『コクーン』は「お正月にこたつに入って遊びたいゲーム」になるといいなあと思ってたんだけど、季節的にダメになっちゃったのが残念なの。
安田 お、いいキーワード。そう、じつはこのゲーム、「こたつサイズ」なんだよ。ボードが真四角で、日本のこたつでみんなで遊んでほしいという願いをこめて作ったんだ。言い出しっぺは、今回進行役を務めてくれた伊勢くん。この「こたつコンセプト」はぼくも気に入っている。
伊勢 (横で聞いていて)恐縮です。
―― ボスからなにか言い残したことはありますか。
安田 プレイ時間が気になる方へ。シナリオ1は30分、他のシナリオでも1時間かかりません
―― とても手軽なゲームになっていますよね。
安田 あと、幸運と不運を行ったり来たりする確率は、一応計算している。『ヒューゴ(ミッドナイト・パーティ)』のデザイナーのクラマー氏の作りを参考にさせてもらった。
―― どんな作りですか?
安田 「黄金の3分の1」。つまり、3~4割で起こることが面白い、ということ。つづくときはつづくのが面白いんだ。5割でも2割でも面白くない。野球の3割バッター理論でもある。幸運と不運は3分の1少しで変化するはずだから、そういうのが好きな人は計算してみてください。
―― 『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』は4月末にはみなさんにお披露目できると思います。
安田 超ゲームマーケット(4月25日~26日)でお目見え、5月5日のゲームマーケット春で先行販売できる予定かな。
―― みなさん、よろしくお願いします!
安田 さて、『コクーン』の前に、もう1つSNEから面白いゲームが出ていたよね。
―― (うっ、台詞取られた)ではつぎに、3月に発売された『ゲット・ラッキー』についてお話をうかがいましょう。



4.デザイナー裏話

―― まずはどのようなゲームかを。

『ゲット・ラッキー』
 ラッキー博士――幸運の神に愛された憎むべき人物。プレイヤーは彼を殺したいと願うキャラクターを受け持ち、武器や動機といったカードで強化して殺害を試みる。しかし誰もが「自分こそ下手人となる」ことを決意しているため、試みはつねに邪魔されてばかり。
 ラッキー博士を殺せるのは誰? 内容はブラックながら、じつにコミカルで楽しいカードゲーム。

安田 もともと、同じジェームズ・アーネストというすばらしいデザイナーによる『キル Dr.ラッキー』というボードゲームがあったんだ。ぼくは現代アメリカのボード/カードゲームのデザイナーとしては彼がナンバー1ではないかと思っている。
笠井 そんなこと言うとトム・レーマン(『王への請願』などのデザイナー)が……(笑)。
安田 も、もちろん彼もすばらしいデザイナーだよ(汗)。
―― 『キル Dr.ラッキー』って、袋に入ったチーパス・ゲームズの作品でしたよね。
安田 そう。逆転の発想でびっくりしたっけ。普通は推理ゲームといえば「凶器などを手がかりに犯人を捜す」ものだけど、それをひっくり返して、「いかに殺せるか」をテーマにしたところが面白かった。
―― それだけ聞くと殺伐としたイメージですが……。
安田 全体の雰囲気はユーモラス。いまこそラッキー博士をこの手で! と思った瞬間、「バナナの皮で足を滑らせた」と言われたり(笑)。なかなかうまくいかない。ラッキー博士はいつもぬけぬけとかわしてしまう。
笠井 だからこその「ラッキー」博士ですよね。
安田 『キル Dr.ラッキー』はセンス抜群のボードゲームだったんだけど、1つだけ難点があった。えんえんみんなで邪魔し合うので、ゲームがなかなか終わらない
―― 1時間半くらいザラでしたよね。
安田 なんとか短く遊べないかなと思っていたら、アーネストが20分で終わるカードゲーム版を作ってきた。しかも同じような面白さ。それが『ゲット・ラッキー』だったんだ。
―― 2014年にアメリカで出たばかりですよね。
安田 キックスターターでぱっと資金が集まったらしいよ。最初、秋口ぎぐるくんが友だちが手に入れたからと持ちこんでくれて、遊んで即、出したい! と思った。
―― それでデザイナーと直接交渉したんですよね。
安田 アーネストはGENCONやオリジンなどのゲームイベントでチーパス・ゲームズのブースを出していて、ぼくも2003年だったか、行ったときに話をしたんだ。お互いに「ドイツゲーム好きだろう?」「もちろんやってるよ!」という会話をしていた。じつはそのインタビューをしたとき、ぼくのそばにいたのが合鴨ひろゆきさん。
―― 今回、ラッキー博士のイラストを描いていただきましたよね。
安田 当時はSNEに所属していたからね。一緒にGENCONに行ったんだ。今回イラストをお願いしたときに、合鴨さんから「わたし、この方に以前お会いしたと思うんですけど……」と言われて初めて思い出した。「すごい縁を感じます!」とイラストを二つ返事で引き受けていただいて。
―― おお、いい話ですね。で、今回、アーネストに直接連絡をとられた、と?
安田 そのへんは翻訳を担当した笠井さんからどうぞ。
笠井 最初は連絡先がわからなくて、スティーブ・ジャクソン(註:TRPG『ガープス』やカードゲーム『マンチキン』などのデザイナー)に訊いたんです。それでメールアドレスを教えていただいたんですが、そのころ他に案件が多くて、『ゲット・ラッキー』のことは後回しにしていたんです。そしたらジャクソンから話を聞いたアーネストが、「『ゲット・ラッキー』を出したいんだって?」とメールを送ってくださって。
―― いきなり? こちらからまだなにも言わないうちに?
笠井 はい。どうやら、ヒトシ・ヤスダを覚えていてくださったらしく、「やるんだったら協力するよ!」と。
安田 嬉しい話だよね。ちなみに彼はプロのジャグラー、大道芸人なんだよ。
―― びっくり! で、そこからトントン話が進んで、この3月には日本語版を出せたんですね。
安田 彼はうるさい……というか、親切を通り越してお節介……?(笑)
笠井 わたしはいくつか海外のゲームを担当していて、会社相手だと当然、ちゃんとした担当者がいるのでやり取りは迅速なんですが、個人のデザイナーさんが相手だと、普通は返事が遅くて困ることが多いんです。デザイナーさんが気まぐれなのか、生活時間が不規則なのか……メールを出しても下手をすると1週間くらい放っておかれるんですけど、アーネストはいつも5分で返事が来るんです!
―― は? アメリカですよね? 時差があるんじゃ?
笠井 でしょう? いつ寝てるんだろう、って思います。いつだったか、丸1日くらい連絡が途絶えたことがあって、そのあと「ごめんごめん、ギックリ腰で起きられなくて」というメールが届いて(笑)。
―― (爆笑)
安田 翻訳でわからないところも全部教えてくれたよね。
―― ラッキー博士ってどんなふうにイヤなやつなのかずっと謎だったんですが、今回のカードゲームには各キャラクターのフレイバーテキストがあって、ラッキー博士の悪行がいろいろ書かれていますよね。ああいう文章の翻訳は大変だったんじゃ?
安田 アーネスト本人しかわからない言葉遣いとかもあったんだっけ?
笠井 「ここがわからないんですけど?」って質問すると、「うん、わからないだろうね。ここがわかるアメリカ人はいないよ」って返事が返ってくる(笑)。で、「じゃあ、こんなふうに訳したいんですけど」って伝えると、「……そうだね。そうしたいんならそうしていいよ。ニュアンス違っちゃうけどね」って寂しそうに。
安田 ははは!
笠井 やっぱり作家さんなんだなあ、すごいこだわりがあるんだなあ、と思いました。
安田 原題の『Get Lucky』――ラッキー博士を捕まえろ、幸運をゲットしろ、という意味なんだけど、調べてみると洋楽でポピュラーな曲に同じタイトルのものがある。で、それをもとにしてるのかな、と気になって問い合わせてみると……。
笠井 5分で返事が返ってきて、「ううん、ぼくのほうが先だよ!」って(笑)。ご本人もタイトルを発表するときにどうするか考えたそうなんですけど、『Get Lucky』というのは完璧なタイトルだから、このまま行くことにしたそうです。
安田 だから日本語版でも『ゲット・ラッキー』にしたんだ。それだけだとちょっとわかりにくいから、「キル Dr.ラッキー・カードゲーム」というサブタイトルをつけさせてもらった。



5.ラッキー博士を捕まえろ!

―― というわけでゲームの内容も、ラッキー博士を殺したプレイヤーの勝ち、ですよね。
安田 ラッキー博士を捕まえた、と言ったほうがいいかな。
笠井 殺した、という感じじゃないですね。だって、凶器がカニとかですよ?(笑)
安田 ラッキー博士を許せないと思いながら彼の屋敷に集まった15人が、自分こそ殺したいと思っているけど、なかなかできない。凶器動機機会という3種類のカードをそろえて殺害ポイントを強化し、いざ実行しようとすると、他のプレイヤーが幸運のクローバーのついたカードを出して阻止をする。
―― わかりやすいゲームですね。
安田 でもそれぞれのカードが殺伐としていなくて、面白い。
笠井 さっき言ったようにすべてのカードにフレイバーテキストがあるんですけど、ゲームのシステム的にはまったく関係ないんですよね。でもそこにいちばん苦労しました。
安田 デザイナー本人も力を入れたところだから、ぜったいに日本語で再現したかった。ただ……悪意カードの一部は無理だったね。
笠井 悪意カードの下のほうにクイズのようなものがあったんですけど、言語依存100%のものだったんですよ。さすがにそれだけは省かせていただきました。フレイバーテキストももっと大きな字にしたかったんですが、とにかく量がたくさん書かれているので、そうもいかず……細かくて申し訳ないです。
―― でもゲームマーケット2015大阪でレクチャーしたとき、やっぱりあのテキストをみなさん、喜んで読んでおられましたよ。
安田 簡単なゲームだけれど、考えるといろいろやり方がある。手番には基本的にカードを引く、カードをプレイする、キャラクターを交換するの3つから選ぶんだけど、交換って、悪意カードを押しつけられて使い物にならなくなったキャラクターを交換するのが主だと思われるかもしれない。でもこのゲームではやっぱり、自分が担当する2人のキャラクターの数字がつづいているほうがいい。
―― 手番はキャラクターの数字順にやってきますからね。
安田 そのことにいち早く気づいて、最初から交換を行うプレイヤーもいたり。考えることはいろいろあるよ。
―― さすがアーネストですね。
安田 殺害の試みを阻止するカードを出すときは、「おまえが出せよ」「いや、おまえが」というやり取りになるので、ツーカーの仲間どうしで遊んでもらうと一層面白いかな。初めての人どうしだと遠慮しちゃう場合があるからね。
笠井 誰かを阻止するときは協力するんですが、そのくせ責任を押しつけ合うというか、できるだけ自分はカードを使わなくてすむようにして……。
―― その結果、阻止しきれずにゲームが終わっちゃったり。
安田 よいゲームのなかに、「テンポラリー(一時的な)パートナー」が発生するものがある。たとえば『アクワイア』とか『スカート』とか、ぼくは大好き。『ゲット・ラッキー』もそう。意志が通じ合う仲間でやるとすごく面白い。
―― 今回、ラッキー博士のデザインは合鴨さんにお願いしましたが、希望どおり憎々しい風貌になりましたね。
安田 ちょっと抜けた感じもあってね。苦労させちゃったけど、思いどおりのものを描いていただきました。
笠井 なかのキャラクターカードなどは、チーパス・ゲームズのものをそのまま使わせていただいています。
安田 もともと、レトロな感じがとてもよかったしね。ラッキー博士だけは、英語版はちょっと好々爺っぽくて(苦笑)。
―― そういや、アーネストからまたなにか情報があったとか?
安田 ふふふ、じつはボードゲームの『キル Dr.ラッキー』の新版が出るそうなんだよ。
―― おお、ではSNEから出せるかも?
安田 乞うご期待、だね。それからもう1つ、ぼくたちが大好きなチーパスのゲームに『Give Me the Brain(脳みそよこせや)』というのがある。これの新版もアーネストが出すらしくて、ぜひやってくれと言われてる。
―― わたしも大好きです。ファストフード店で働くゾンビになって、できるだけ早く仕事を終わらせる(=手札のカードをなくす)というゲームですよね。
笠井 頭を使う仕事には脳みそが必要なんだけど、これがポロポロ落ちまくる(笑)。
安田 めちゃくちゃ面白いゲーム。これを2015年秋ごろに出せたらと思っている。そのときにはよろしくお願いします。
笠井 ……。
―― ん、どしたん?
笠井 ……翻訳、たぶんわたしがするんですよね。
安田 もちろんだよ?
笠井 『Give Me the Brain』にもシステムとまったく関係ないテキストがいっぱいあるんですよ。しかもものすごいスラングだらけ。翻訳を考えるといまから……(悩)。
安田 大丈夫、またアーネストが付きっきりで教えてくれるって!(笑)



6.注目作が目白押し!

―― ちょうどいいので、このまま今後のラインナップの話に行きましょう。グループSNE/cosaicからこの夏にかけて出る作品を教えていただけますか。
安田 まず4月に、「ブラックストーリーズ」の新作である『ファニーデス』が登場します。
笠井 ちょっとおかしな実話ばかり集めたものですよね。
安田 「1」とか「2」とかつかない、1つのテーマに絞った新しいシリーズです。お楽しみに。
―― その後、『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』が出て、5月には……。
安田 2つのダイスゲームが出るよ。『CV(履歴書)』というポーランドのユニークな人生ゲームの日本語版。ダイスを振ってカードを集め、自分だけの履歴書を作っていくゲームだ。
笠井 ちょっと大きめの本格的なゲームですね。
安田 もう1つは『王への請願』。アメリカを代表するもう1人のデザイナー、トム・レーマンの代表作。
笠井 あ、フォローした(笑)。
安田 最新作の『ロール・フォー・ザ・ギャラクシー』も面白かった。『王への請願』はコンポーネントもすばらしい形で出せると思うのでお楽しみに。
―― 箱のなかが○○になってて××に使えるなんて口が裂けても言えない!(笑)
安田 さらに6月には、クニツィーアのすばらしいカードゲーム。かつてアラカルト・ベストカードゲーム賞を獲ったけれど絶版になった『コルセア(海賊)』というゲームを、なんと槻城ゆう子さんのすばらしいイラストで出します。
―― ラフを拝見しましたけど、女海賊がそれはもう色っぽくて……。
安田 7月には2点。先日行ったフランスの国際ゲーム祭でも遊ばれていた、人類の発展を扱うボードゲームの『オリジン』
笠井 ボードにこけしを並べていくゲームですよね。
―― 怪しい表現はやめてください。あ、いや、合ってるか。
安田 とても面白いのでお楽しみに。これはそのままの形で出ます。そしてそして……『ソード・ワールド2.0 RPGスタートセット』がいよいよ登場!
笠井 おおっ!
安田 初心者の方の導入にぴったりです。もちろん、すでに遊んでくださっている方にも喜んでもらえるアイテム入り。豪華BOXになっています。
―― いやあ、毎月なにか出ますね。
安田 全部買っていただくのは大変だと思いますが、カードゲーム、ボードゲーム、RPGと、いろいろな作品をそろえています。5月にはTCG新作『ドレッドノート』も出ます。気に入ったものから遊んでいってください。
―― 本日はありがとうございました。
笠井 ありがとうございました。
安田 今後もグループSNE/cosaicのゲームをよろしくお願いします!


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