――: |
それでは、11月の著者インタビューを行いたいと思います。話をお伺いするのは〈SNEのボス〉安田均、そして〈ボードゲーム大好き秘書〉柘植めぐみが同席いたします。まず最初に、いよいよ話題の新作が11月22日に発売の運びとなりましたね。 |
安田: |
ふううーーーっ! |
――: |
ええっ、いきなりどうされました(笑)? |
安田: |
いやいや、今日も新作ゲームをいくつかやりましてですね。Spiel2014から帰ってきて、すでに20点以上の新作を遊んできたんですよ。
|
――: |
充実のため息でしたか(笑)。SNEボードゲーム班のツィッターでも随時遊んだゲームがつぶやかれていますね。 |
安田: |
あれは新作がメインで、じつはその間もクニツィーア氏の旧作をもう1回チェックしたりしてるんですよ。 |
――: |
なぜ、そのようなことになっているかは後ほど改めてお伺いするとして、まずSNEのボードゲーム製作について、この10月で1周年になるんですね。 |
安田: |
そうなんです! おかげさまで順調にボードゲームを出すことができています。思い起こせば一年前、どうなることかと思ったものだけれど。 |
柘植&笠井: |
(こっそり)いまもどうなることかと思ってますけれど…… |
安田: |
わはは、それはともかく(笑)、SNEオリジナルとしては7月の『ゴーストハンター13 タイルゲーム EX2 7つの大罪』(以下『7つの大罪)以来になる新作3点が11月22日(土)にいよいよ発売されます!
「ゴーストハンター13タイルゲーム」シリーズ(以下「GH13 タイルゲーム」)の拡張第二弾『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』『アサンテ 完全日本語版』『ライナー・クニツィアのポイズン』の3点です。(ゲーム情報はこちら) |
――: |
『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』のゲーム詳細については、グループSNE公式サイトに充実したニュースが掲載されていますのでそちらをご覧いただくとして、デザイナー安田均として「ここがすごく面白いんだ、新しいんだ」と自負しておられるところはどこでしょうか。 |
安田: |
はいっ、拡張第二弾は「ディアブロ・ドゥ・ラプラス」、要するに「ラプラスの魔」です!
|
――: |
あの、できればもう少し詳しく(笑)。 |
安田: |
もともとゴーストハンターというのは、1987年のコンピュータゲーム『ラプラスの魔』を皮切りに山本弘氏の同名小説などへと広がっていくのですが、私自身が企画原案のシリーズなんです。その大元になっている設定場所が今回「GH13 タイルゲーム」シリーズになって登場する、と。 |
――: |
最初のコンピュータゲームや小説の舞台がタイルゲームで再現されていると考えていいでしょうか。 |
安田: |
と、ふつうなら思うでしょ? もちろん、そうしたフレイバーは生かしたいけれど、同時に1年前からの「GH13 タイルゲーム」シリーズでは、狂える天才建築家タテルベタカアキをゴーストハンターたちが追うという設定がありますね。その大クライマックスにもしたかった。これらをジョイントさせたのが、今回の拡張第二弾『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』なんですね。 |
――: |
そうした機運を受けて、ゴーストハンターシリーズの小説の復刊もはじまりました。 |
安田: |
はい、9月に『ラプラスの魔』、11月に『パラケルススの魔剣』、そして私の『アルケリンガの魔海』とつづいていきます。今回の拡張セット『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』ではそうした他の小説2作とも関わりますので、ぜひ楽しみにしていてください。 |
――: |
特に『パラケルススの魔剣』は『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』とほぼ同時期の11/20に発売です! |
――: |
『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』の背景設定としてはいまお話しいただいたとおりですが、ゲーム的は仕掛けにはどのような特徴があるでしょうか。 |
安田: |
はい、それは2つあります。1つは拡張第一弾『7つの大罪』から屋外タイルや変形タイルが登場していますね。『ディアブロ・ドゥ・ラプラス』ではその一環として三角タイルや大型タイルの補完などをして、街を作れるようにしました。 |
――: |
ということはアーカムの街なんかも…… |
安田: |
アーカムちゃう、ニューカムや!! |
――: |
うっわ、ごめんなさい。これ記事に残すんかな? |
柘植: |
その場合はボスから「こらっ」って突っ込み入れときましょう。 |
ボス: |
こらっ(笑)! 「GH13 タイルゲーム」というのは面白いゲームで、いろんなシナリオや舞台で遊べるんですね。RPGにもキャンペーンシナリオはありますが、元々シミュレーションゲームでも連続シナリオという形はあります。「GH13 タイルゲーム」にもそうしたキャンペーンを遊ぶストーリーゲーム的な部分があるでしょう? なので、今回の拡張セットの狙いの1つとして、ニューカムの街やウェザートップ館をつづけて遊べるようにしたいというのがありました。で、それに即したタイルを作ったわけです。 |
――: |
そして、もう一つは? |
安田: |
先ほども言いましたが、ストーリーとしてはニューカムの街の謎に挑み、ラプラス城に突入します。コンピュータゲームや小説でゴーストハンターシリーズを楽しんでくださった方々がそれを追体験する形でも入れますし、「GH13 タイルゲーム」シリーズを『7つの大罪』へと遊んでタテルベタカアキを追ってきた方々が、その流れからラプラス城へ飛ぶこともできます。 |
――: |
ゴーストハンターシリーズの大元の設定と、「GH13 タイルゲーム」独自の設定がここでジョイントされたということですね。 |
安田: |
ええ、フルにお腹いっぱいになるまで遊んでほしい、という思いで作りました。 |
――: |
たしかにテストプレイで遊んだときにも、お腹いっぱいになりました(笑)。 |
安田: |
ふつう拡張セットって半分か3分の1くらいの規模で作るものでしょう? それが基本セットと同じだけのボリュームで拡張セット1、2と作ってしまいました。 |
――: |
シナリオブックがどんどん分厚くなってるような? |
安田: |
同じ館探索型のホラーゲーム『ビトレイヤル』(『丘の上の裏切り者の館』:ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社:2004年)には最初から50本のシナリオが入っていたんですが、ぼくたちも公式サイトに掲載された読者の応募シナリオと今回の拡張セットを合わせると、50本以上遊べるようになりました。 |
――: |
年末に向けて、いくつかイベントも予定されていますね。 |
安田: |
はい、ぼくも参加しますので、ぜひ一度ラプラス城を体験してください。コンピュータゲームやラプラス城の設定も残っています。 |
柘植: |
どんなふうに残っているかは遊んでみてのお楽しみです。 |
安田: |
草壁健一郎やカサンドラも出てきますよ! |
――: |
おう(笑)。ということは、基本セットの霊能力者(ミスティック)のキャラクターは草壁健一郎そっくりの顔をしていますが、あれは本人じゃなかったのですね?! |
安田: |
それはまあ(苦笑)、ぼくらは「健二郎」と言って使っていました。やっぱり「ゴーストハンター」を遊ぶからには草壁健一郎をやりたい方もいるでしょう? そういう方のために用意したのですよ。
草壁健一郎
「ゴーストハンター」シリーズに登場する東洋人の霊能力者。イラストレーター弘司さんのイラストとその謎めいた雰囲気で人気がある |
カサンドラ
ラプラス候の娘。事件の重大な鍵を握る人物 |
|
――: |
それでは、先ほどちらっと名前が出た小説『アルケリンガの魔海』についてもお伺いできますか。首を長くして待っている方も多いと思います。 |
安田: |
はい、大変お待たせいたしましたが、無事に書き終えました! |
――: |
おおっ! して、気になる刊行時期は? |
安田: |
出るのは間違いありません。発売時期はいちおう来年1月を予定していますけれど、諸般の事情でひと月遅れる――かもしれません。イラストはもちろん弘司さんです。弘司さんには、SNE関連だけでもゴーストハンターのゲーム、小説、それに「コクーン・ワールド」の小説、ゲーム、ドラマCDとものすごく頑張っていただいています。 |
柘植: |
アルケリンガの魔海』のイラストはすべて描き下ろしですから楽しみですね。 |
――: |
では、ここでは来年早々とお伝えしておきますね。 |
安田: |
はい、ぜひゲームも小説も楽しみにしていてください。 |
――: |
少し裏話をお聞きしますが、Spiel2014に行かれる前日(10月15日(水))に原稿を書き上げられたそうですね。 |
安田: |
そう、そうなんです! ともかくやっておかないと、と思って仕上げました。もう何年お待たせしたでしょうか。2002年に出す予定で、遅くとも2003年には出るだろうと編集さんも思ってくださってました。それがそのまま、いまに至る(苦笑)。 |
柘植: |
12年以上ですか。 |
安田: |
じつは、時を同じくしてTCG(主に『モンスター・コレクションTCG』)が忙しくなって、小説だけでなくボードゲームなども始めるのが遅れてしまったんです。 |
――: |
あのころは本当に猛烈なお忙しさでしたから。 |
安田: |
それはいまも同じで、やっぱりボードゲームやカードゲームで忙しい。自分でいちから小説を書くとなると一年、最低でも半年はかかるでしょう。ゲームの製作をしながら、とてもそんな時間はとれない。なによりありがたかったのが、秋口ぎぐるくんがぼくのプロットに沿って彼なりの形できれいに書き上げてくれたんです。 |
――: |
秋口さんとの共著という形ですね。秋口さんから原稿が届いたのはいつごろでしょうか。 |
安田: |
彼は3ヶ月かけて9月初旬には仕上げてくれました。そこからなら3週間、9月21日には完成すると思っていたら、取りかかったのが9月21日だった、と。 |
――: |
あはは……って、ここ、笑うところじゃないですね(笑)。 |
安田: |
その3週間で今回も洋書の資料を5冊くらい読み直しました。そこからさらに3週間、10月15日に書き上がって「ばんざーい!」となったはいいが、「はて、明日からなんかあったな」と。 |
柘植: |
16日からドイツへご旅行ですよ(笑)! |
安田: |
そう、本来なら「やった-」と酒飲んで気分よく寝るところなんだけれど、Spiel2014の会場では10社以上の打ち合わせがある。しかも、「新作ゲームがこれだけあります」と柘植が資料をプリントしてくれた。
|
柘植: |
400ページ以上ある資料ですよ。 |
安田: |
これ見た瞬間、うっとなった(笑)。そのときには、すみません、さすがにゲームから逃げたいと思いました。 |
柘植: |
でも、一瞬ですよね? |
安田: |
はい、一瞬です(笑)。だって、これ見てたらね。なんかすごいのがあるんじゃないの、と。それからチェックをはじめました。 |
――: |
出発前日の夜に、すべて目を通されたんですか。 |
安田: |
うん、でも、ざーっと流し読みしただけじゃ怖いじゃないですか。だから、2回チェックしました。翌日の飛行機の機上と、ICE(ドイツ新幹線)で済ませて、今度こそ本当に乾杯だー、と楽しみにしていたんですが…… |
――: |
ドイツ鉄道がストだったんですね。 |
安田: |
そう、ぎゅうぎゅう詰めで立ったままで、資料を読むどころじゃない。荷物はそんなになかったけど―― |
柘植: |
いやいや、この分厚い資料お持ちだったでしょう? |
安田: |
あ、そうや、この重いの持っていったんや! これ、写真撮っておいてね。 |
柘植: |
了解です(笑)。
これがその資料です!
|
|
安田: |
で、エッセンに到着したその日も酒を控えていると、秋口くんに「どうしてですか、小説は終わったんでしょ?」と言われて、「これのチェックせなあかんねん」と。秋口くんには「好きやなあ」と呆れられました(笑)。ただ、そこまでしたのには理由があるんです。 |
――: |
その理由とは? |
安田: |
Spiel2014には木・金・土の三日間しかいられないのに、その間に10社以上の打ち合わせがある。『マジック・ザ・ギャザリング』のボードゲームや『クトゥルフ・ウォーズ』などが出るし、会場に行ってみたら『ルーンクエスト』のボードゲーム『グローランサ;ゴッズ・ウォー』も出るとの予告。そういうのもちゃんとチェックしなくちゃいけなくて、考えてみたら、会場を回れるのは1日目の木曜日の午後しかないんですよ。 |
――: |
そうして購入してこられたのが79点、それをいま鋭意遊んでいらっしゃるわけですね。 |
柘植: |
いつにもなくものすごい勢いでやっています。 |
安田: |
そう、仕事となると大変ですけれど、やっぱりSpil2014は楽しかった。活気はあるし、面白いのが出ているので、早く遊ぼうと頑張っています。 |
――: |
それらについてはボスの力作「Spiel2014 レポート」やニコニコ動画、SNEボードゲーム班のツィッターなどでご紹介していますので、ぜひご覧ください。 |
――: |
11月22日(土)発売の『アサンテ』についても、ボスがグループSNE公式サイトに力作のコラムを掲載されていますね。 |
安田: |
ええ、『アサンテ』はとてもいいゲームです。ただ、その前の『タルギ 完全版』もいいゲームです。いいゲームはやっぱりみなさん、よくわかっておられて、売り切れてしまいました。けれど、再版となると、初版と同じかそれ以上刷らないとダメと言われて悩んでいたんですが、コスモス社と相談して話がまとまりかけています。その流れのなかで、二人用ゲームの第二弾として『アサンテ』発売となりました。これもすごく面白いゲームですので、ぜひみなさんに遊んでほしい。その気持ちをこめて紹介記事を書きました。 |
――: |
『タルギ』はわれわれにとってもすごく思い入れの強い作品ですね。 |
安田: |
はい。ですから、ファンの方にいい作品を紹介できたと思っていますし、われわれとしても間違ってなかったと感じています。 |
――: |
今回の二人用名作『アサンテ』は、どういったゲームでしょうか。 |
安田: |
ちょっと説明が長くなりますが、『アサンテ』のデザイナーであるリュディガー・ドルンは、ぼくの大好きなデザイナーの一人です。昔から好きだったんですよ。彼はいろんなゲームを作ります。2001年に『ジェノアの商人(The Traders of Genoa)』、2004年に『ゴア(Goa)』を作り、2005年には『ルイ14世(Louis XIV)』で、ファン投票で選ぶドイツゲーム賞(Deutscher Spielepreis)を取っています。ちょっととんがったところもある本格的なゲームを作るデザイナーだな、と思っていたら、同じ2005年に『ジャンボ』という2人用ゲームの傑作を作ったんですよ。 |
――: |
『ジャンボ』はドイツゲーム大賞(Spiel des Jahres)の候補作に入ったんですね? |
安田: |
そうです。その後、2010年ごろから再びいろいろ作りはじめて、2012年『ヴェガス(Las Vegas)』というサイコロを使ったじつに面白いゲームで話題になりました。ところが、それもまた候補作どまり。そのときもう一つ出したのが、『ジャンボ』の改良決定版である、この『アサンテ』です。『ジャンボ』はカードゲーム賞であるアラカルト賞を取っていますし、もちろん『アサンテ』も人気は高いです。そして、今年2014年、ドルンはついに『イスタンブール(Istanbul)』でドイツゲーム大賞上級部門を獲得しました。 |
――: |
まさに念願かなって、ですね。 |
安田: |
いま乗りに乗ってるデザイナーで、『イルベッキオ(Ill Vecchio)』とか、いいゲームをどんどん出しています。カードゲームもね、めちゃくちゃ楽しいのを作ってるんですよ。たとえば『破滅の13(JETST SCHLÄGT’S)』は、まさに「ウ二ゲー」だと笠井も絶賛してたたよね? |
――: |
ええ、発想がウニ頭なんですよね(笑)。
「ウニゲー」
僭越ながら『Role&Roll』誌に連載中の筆者のコラム「ウニ頭にもできるもん」から派生したSNE用語。シンプルで楽しいゲームをSNEではこう総称しています |
|
安田: |
かと思えば、トリックテイキングゲームをもとにした『ガーゴン(Gargon)』なんかは、マストフォローのところだけちょっと変えた変なゲームです。もちろん、これは褒め言葉ですよ。 |
――: |
幅の広いデザイナーなのですね。 |
安田: |
そうです、いろんなゲームが作れる人で、ぼくは高く評価しています。そして、今回、『ジャンボ』の改良決定版の『アサンテ 完全日本語版』をグループSNEで出すことになりました。 |
――: |
簡単にゲームの内容を紹介していただけますか。 |
安田: |
プレイヤーはアフリカ商人になっていかに儲けるかを競いあうゲームです。ハンド(手札)マネジメントというのかな、それをいかに上手くやるかが非常に面白い。邪魔カードももちろんありますが、それを阻止するカードもあります。手番にできる行為は5つなんですが…… |
柘植: |
やりたいことはいっぱいあるけど、カードもなきゃ困る。カードを引くか、それ以外の行為を取るかが悩ましくて楽しいゲームです。 |
安田: |
プレイ時間は1時間かかりません。それに加えてもう一つ、このゲームのすばらしい点がありまして。 |
――: |
はい。 |
安田: |
最初に出たのが『ジャンボ』、その改良版として出されたのが『アサンテ』で、こちらは聖地カードというちょっとしたルールが追加されています。でも、変更されたのはそこだけなので、『ジャンボ』のカードを混ぜて遊べるんですよ。 |
――: |
なんと! |
安田: |
逆に『ジャンボ』は『ジャンボ』として遊べて、そこに『アサンテ』のカードを入れても遊べるんです。 |
――: |
なんと、なんと! |
安田: |
面白いでしょう? なので、『アサンテ』が好評だったら『ジャンボ』もやりたいとコスモス社に言ったら喜んでもらえて、「じゃあ、そのときに『タルギ』もちょっと刷らせて」とお願いしたらOKが出た。 |
――: |
うちのボスは甘え上手ですか(笑)。その2つのゲームのカードを混ぜることで、どういった変化が生まれるのでしょうか。 |
安田: |
『ジャンボ』と『アサンテ』では入っているカードの構成が違っていますから、当然バリエーションが増えます。2つが混ざることでできるコンボもあるし、かなり面白くなりますよ。TCGなんかと一緒ですね。 |
――: |
なるほど、それは楽しそうです。イラストについてはいかがでしょうか。 |
安田: |
そう、それだ! オリジナル版のイラストはミヒャエル・メンツェルが描いています。 |
――: |
え? 『アンドールの伝説(Legends of Andor)』のデザイナー? |
安田: |
そう、彼をデザイナーと思っている人は多いでしょうね。でも、その前からボックスアートを手がけています。ドイツには有名なゲームイラストレーターが何人かいますが、メンツェルはそのうちの一人です。日本語版でもカードイラストはメンツェルのものを使わせてもらっているので、楽しい絵がいっぱい見られますよ! |
――: |
そして、日本語版のパッケージイラストは米田仁士先生ですね。 |
安田: |
こういうファンタスティックな異郷ものなら米田さんにぴったりだろうと思って、お願いしました。
|
――: |
『タルギ』の感触からみて、2人用ゲームは求められてるという印象ですね。 |
安田: |
ええ、2人用ゲームは今年のSpiel2014でもたくさん出ていました。それに、ホビージャパンさんもいくつか出すんよね、柘植? |
柘植: |
はい、『パッチワーク(Patchwork)』とか予定に入っているみたいです。 |
安田: |
我々も2人用ゲームはいろいろ考えていますので、楽しみにしていてください。 |
――: |
それでは、3作目の『ライナー・クニツィーアのポイズン』についてお話いただけますか。 |
安田: |
Spiel2014でクニツィーア氏に会ってきました! 『ポイズン』は簡単でだれでもすぐに遊べて、そのくせ「う~ん」と悩んでしまうジレンマもあって、典型的なクニツィーアの名作ゲームですね。 |
――: |
最初はアメリカのプレイルーム社から出たということですが、そのときにはあまり話題にならなかったんですか。 |
安田: |
いえ、もちろんクニツィーアのファンは喜んでいましたよ。でも、やっぱりアメリカとドイツではゲームの好みが微妙に違ってるんですね。カードゲーム賞であるアラカルト賞ではちゃんと評価されています。ルールはほんとに簡単なんですが、すごく悩ましい。そして、そこが楽しいゲームです。 |
――: |
この小さい箱はドイツ語版?
|
安田: |
そうです、ちょうど1年前ですか、ドイツでもAmigo社からリメイク版が出されています。ただ、グループSNEでは元の版にあるボード(鍋)をぜひ入れたいと考えました。 |
――: |
日本語版のボックスサイズは『キャット&チョコレート』や『王宮のささやき』と同じで、そのなかにボードが2つのパーツに分かれて入っているのですね。
|
安田: |
そうです。パッケージイラストは九月姫さんの可愛いイラスト、カードとこのボードは合鴨ひろゆきさんにお願いしました。これを見せたら、クニツィーア氏も喜んでくれました。
|
――: |
簡単にゲームの内容を教えていただけますか。 |
安田: |
カードには「1、2、4、5、7」があって、足して13を超えないように、組み合わせを考えて1枚ずつ出していきます。で、どこかでパンクすると、それらのカードを全部引き取らないといけない。でも、1つの色のカードをいちばんたくさん集めたら、マイナスが帳消しになる。 |
――: |
なるほど、難しくはないけれど、たしかに悩ましそうです。 |
柘植: |
数字の枚数にばらつきがあったり、3と6がなかったり、とすごくよく考えられたゲームだと思います。 |
――: |
数字のことは私はわからないんですけれど、その辺りはやっぱりクニツィーア氏が数学者であることも関係しているんでしょうか。 |
安田: |
もちろんバランスは取っているでしょう――でもね! クニツィーア氏はゲーマーです、だから作れるんです。数学者だからってこんなゲームが作れるわけじゃない。 |
――: |
それはおっしゃるとおりですね。 |
安田: |
あ、思い出した。ちょっと余談になるけれど、JGC2014でぼくと水野良、秋口ぎぐるらと遊んだんだよね。えーっと、あと一人、だれやったっけ。 |
――: |
たしか、加藤(ヒロノリ)さんでは? |
安田: |
そうそう! で、その4人で遊んで、みんなうんうん唸りまくってたよね。ぼくはうまくやったけど(笑)。 |
――: |
あれはすごい対決でしたね。ギャラリーもいっぱいで、見ている方たちにも楽しんでいただけたんじゃないでしょうか。 |
安田: |
『ブラックストーリーズ』や『王宮のささやき』と同じで、どこでもだれとでも遊んでもらえますから、ぜひやってみてください。『ポイズン』については、それにつきますね。 |
――: |
最初にクニツィーア氏の旧作も遊んでいるとおっしゃってましたが? |
安田: |
それはね、クニツィーア氏が「いろいろやってもらっていいよ」と言ってくれたので、どんなゲームがあったか、確認の意味でやり出したんですよ。そうしたら、やっぱりすごい。どれも面白いんです。2人用ゲームも含めて、いろいろ考えています。ただねえ。 |
――: |
はい? |
安田: |
逆にクニツィーア氏から「ヒトシがどんなゲームを選ぶのか楽しみだ」と言われたら、どきどきするんよ。 |
――: |
それはプレッシャーだ(笑)。こちらについても続報を楽しみにお待ちください。 |
――: |
それでは、最後に今後の予定についても簡単にお伺いできますか。 |
安田: |
まあ、11月に新作3つが出て、皆さんもまだどれを買おうか迷っておられるところだと思いますが(笑)、2015年に出すものもいろいろ考えています。海外新作ゲームの日本語版はもちろん、われわれのオリジナルも出していきたいですね。それから、海外の埋もれた名作もぜひ紹介したいです。これについては、けっこうSNEとしてはやっているなあと感じています。 |
――: |
近々の発売予定としては、どのようなものがあるでしょうか。 |
安田: |
まず今年12月に『ブラックストーリーズ3 とんでもなく過激な50の“黒い”物語』が出ます。ぜひともクリスマスやお正月にみなさんで楽しんでください。 |
――: |
クリスマスやお正月にそれはブラックすぎませんか。 |
安田: |
大丈夫や! |
――: |
というボスの後押しを受けましたので(笑)、クリスマス直前の12月22日(月)、尼崎でイベントをやります。会場は大阪からも三宮からも近いですし、平日の夜ですから、ぜひ仕事帰りにお気軽に立ち寄っていただければと思います。(詳細は決まり次第、SNE公式サイトに掲載します) |
安田: |
Spiel2014では、版元のmoses社の主催したブラックストーリーズ10周年記念のパーティにも出てきました。詳しくはぼくのレポートを読んでいただいたらわかるんですけれど、著者のベッシュはめちゃくちゃ面白い男でした。あの人はゲームデザイナーでもあるけれど「作家」なんですね。 |
――: |
あのときパーティで出されたケーキ、チョコレートに赤いソースがかかってましたけれど、あれは血糊の演出だったんですね。 |
安田: |
そうです、それを海外担当の美女ニーナが真っ黒のドレスを着て切るんです。 |
――: |
かっこいい! なんとも洒落が効いていますね。で、その後の予定となると、2015年に入ってしまうんですが…… |
安田: |
前半くらいまではしゃべらせて! |
――: |
どうぞどうぞ、ぜひお願いします。 |
安田: |
2015年の3月1日(日)にゲームマーケット大阪がありますが、それに向けていま全力で作っているのが、ジェームス・アーネスト氏の『ゲット・ラッキー』です。
|
――: |
カードゲームですか。 |
安田: |
ええ、でも、じつは元になるボードゲームがあるんです。それが1996年に出た有名な『キル・ドクターラッキー』です。当時は犯人を当てる推理ものが主流だったんですが、こちらはだれがドクターラッキーを殺すかを競いあうゲーム。画期的でしたね。この無神経そうなおじさん、ラッキーさんをみんなが殺そうとします。でも、なかなかうまくいかない、そんなどたばたを狙ったユーモラスな作品です。
|
――: |
ボードゲームではプレイ時間が1時間以上かかりましたね。 |
安田: |
なので、本来の風味を生かしたまま、短時間で終わるようにしたのが、このカードゲーム『ゲット・ラッキー』なんですよ。 |
柘植: |
ルールは簡単なんですが、カードにいろいろフレイバーが書いてあるんです。 |
安田: |
そうそう、それを読めば、どうしてラッキーさんがみんなから狙われるのかがわかる。あまりにも服のセンスがださくて許せないとかね(笑)。その辺りも含めて、ぜひ楽しんでください。 |
――: |
SNEのオリジナルゲームも待たれていると思うのですが、それについてはいかがでしょう。 |
安田: |
11月に小説『ルナル・サーガ』『コクーン・ワールド』が同時に復刊されましたね。その『コクーン・ワールド』をテーマにしたボードゲームを作ろうと、いま必死に頑張っています。ちょっとだけ内容を明かすと、面白いレースゲームになるんじゃないかな。それから日本にはないコンポーネントを使いますよ! |
――: |
レースゲームというと双六のような感じですか。 |
安田: |
そうなんですけれど、舞台がコクーン・ワールドですから、なにが起こるかわからない双六になるでしょう。その一月後ぐらいに「ブラックストーリーズ」のテーマ版である「ファニーデス」を予定しています。 |
――: |
ファニー? ちょっと笑える感じでしょうか。 |
安田: |
そうです、ブラックユーモアというとブラックな感じが先に出ますけれど、こちらは「そんなばかな」と言いたくなる滑稽なユーモア型のセットです。 |
――: |
そういうシリーズを望んでいる方は多いんじゃないでしょうか。というか、私自身が興味津々です。 |
安田: |
それから、ポーランドのゲーム会社グランナ社の『CV(履歴書)』があります。グランナ社はSpiel2014でも元気でしたよ。子ども向け教育関係のゲームを出している大手なんですが、ドイツでいえばラベンズバーガーみたいな感じですね。そこが大人向けのゲームを出した第一弾が『CV』なんです。すごく人気があって、さっそく拡張版も出ていました。人生ゲームをカードとダイスを使って遊ぶんですが…… |
――: |
以前やったとき、私の人生はなんともせつないもので終わりましたが。 |
安田: |
そうそう(笑)。ルールはシンプルだし、勝っても負けても、人生のほろ苦さがしみじみしみる楽しいゲームです。拡張セットも、これまた『ゴシップ』といういかにもなネーミングでね。これから遊ぶんですが、楽しみですね。イラストはオリジナル版が素晴らしいので、そのまま使う予定です。
|
――: |
さらに? |
安田: |
はい、ダイスゲームの名作と言われるトム・レーマン氏の『王への請願』です。
遊んだ人からは絶賛されていたんですが、なぜか絶版になっているんですよね。じつは1992年、彼がまだアメリカで頑張っていたころ『ファーストフード・フランチャイズ(Fast Food Franchise)』という面白いボードゲームを出していました。ぼくも大好きで友人が日本語訳をつけて売ったりしていました。 |
――: |
レーマン氏はそれを覚えていらっしゃいましたね。 |
安田: |
ええ、それで、一回会おう、ということになって、彼ともSpil2014で会ってきました。最近『レース・フォー・ザ・ギャラクシー(Race for the Galaxy)』もヒットしていて、精力的に作品を発表しています。またぜひそうしたゲームもどんどん作ってくれ、と話をしてきました。みなさんには、まずこの『王への請願』を楽しんでいただきたいと思います。 |
――: |
コスモス社やグランナ社など大手のゲーム会社との契約はもちろんですが、直接デザイナーさんとのやりとりも多いですね。 |
安田: |
そうなんです。そういう人たちとはわかりあえる。いろいろ苦労している(笑)Z-man Gamesのゼブ(Zev Shlasinger氏)は、以前われわれの『マーメイドレイン』をアメリカで出してくれたりしたし、そういった人たちといろいろやっていけるのはほんとうに楽しいです。 |
――: |
それでは、最後に今後の抱負をお聞かせください。 |
安田: |
まずは、みんなで面白いゲームを遊ぶ輪を広げよう! という、そこからやっていきたいと考えています。フランスやスペインなどいろんな国の会社ともやっていきたいし、もちろんオリジナルも出したい。これからも頑張っていきますので、ぜひ応援よろしくお願いします。 |
――: |
本日はありがとうございました! |
|
ゲームを遊ぶ輪を広げるべく、今後さまざまなイベントが予定されています。
お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りくださいね!
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